ここでは私ちなおがこれまでに読んだ競馬関連書籍を紹介しています。
競馬予想、というより競馬の根底にある楽しみを見出すような内容のもののほうが多いかと思います。
簡単な書評も記載しているので、気になった書籍があればぜひご購入して読んでみてください!(絶版のものもあります。著者名、編集者名敬称略)
ネアルコ、ナスルーラ、ノーザンダンサー、ミスタープロスペクター…等、なんとなく聞いたことのある馬名かと思います。これら種牡馬たちがいかに系統を確立してきたかを、生産された背景や、その時代の考え方などと照らし合わせて解説されています。とても読みやすく、近現代の競馬における血統の系統が確立していく過程を知ることができるかと思います。
■競馬の血統学 Part2 母のちから 吉沢 譲治
『競馬の血統学 サラブレットの進化と限界』の続編になります。こちらは新版は出版されていないようです。前著が種牡馬に焦点を当てたのに対し、本著では母系に焦点を当てた内容となっています。ヨーロッパ、とくにドイツでは母系を重視する傾向にあり、伝統を重んじる文化がある…といったことや各国の母系に対する考え方をサラブレッド生産の歴史とともに学ぶことができます。
■血のジレンマ サンデーサイレンスの憂鬱 吉沢 譲治
日本競馬の血統図を書き換えたといっても過言ではないサンデーサイレンス。その血が飽和することで今後の日本競馬にどのような影響を与えるのかについて言及されています。10年ほど前に出版されたものなので、今の競馬と著者の論述を照らし合わせながら読むと面白いかもしれません。
前述の著者と同じですが、続編ではありませんが、上記の2作品を読んだ後に読むほうが理解が深まるかと思います。
■田端到・加藤栄の種牡馬事典 田端 到、加藤 栄
「種牡馬事典」という名目の書籍はいくつかありますが、私が一番最初に手にしたものはこの著者のものでした。注目の新種牡馬から既存の種牡馬の現役時代、血統背景、代表産駒等のポイントが端的にまとめられているかと思います。ただ、包括的にまとめられている分、個々の内容が薄いように感じました。データの部分はあまりあてにならないかと思いますので、後々参照する箇所は少ないかと思います。
■勝ち馬がわかる血統の教科書 亀谷 敬正
血統関連の書籍ではかなり見かけることの多いかと思います。ナスルーラ、ネイティヴダンサー、ノーザンダンサー…等々、大系統ごとに項目が分けられていて、そこから派生していった系統について網羅的に書かれています。網羅的に書かれている分、血統表よりも文章量が多く、少し元の血筋の影響をイメージしづらいかもしれませんが、ネットにある血統表と見比べながら読むといいかもしれません。入門書としては少し難しいように感じますが、読み返すごとに発見も多いので持っていて損はない1冊です。
■一から始める!サラブレッド血統入門 平出 貴昭
こちらも血統関連の入門書的な位置づけのものです。カラーページで、取り上げている馬についてはすべてではありませんが写真や血統表も記載されていて、文章を理解しやすいように書かれています。主要父系(亀谷氏の書籍でいうと大系統)ごとに章分けされていますが、どの章も淡々とした馬の実績の記載になっているので、もう少しそれぞれの血の特徴的なものがあればよかったかな、と思いました。
■日本サラブレッド配合史 笠 雄二郎
かなり古い書籍ですが、この本なしでは日本の近代競馬を語ることはできないかと思います。内容は非常に難しいので、先に挙げた書籍等で基本的な血統について知ったうえで読むほうがいいですね。日本の在来血統、明治の小岩井基礎牝馬、下総御料基礎牝馬から配合史をたどる超大作となっています。現在は絶版となっているので、もし購入するならアマゾンやメルカリ等で中古のものを探すか、こちらのサイトで電子版を安価で購入することもできます。(私は中古で現物を購入しました)
血統屋→http://www.miesque.com/c00001.html
■ROUNDERS vol.5 治郎丸 敬之(編集)
本号は「血統 血と知のギャンブル」という特集で、数名による血統評論が掲載されています。血統研究・評論で著名な故山野浩一氏の貴重な文章も読むことができます。ただ、こちらも内容が少し難しいので、入門書的なものを読了されてから読まれるほうがいいかと思います。
■覚えておきたい世界の牝系100 平出 貴昭
本著は世界的に発展している牝系まとめたものです。一頭ずつの系譜や発展していった産駒がどのような結果を残していったか等について端的にまとめてあります。読み物というよりかはミニ辞典のような感じで、競馬を始めたての方にはなじみのない馬が多く、やや退屈かもしれませんが、血統マニアにはおすすめできると思います。
基本的な馬の見方について、馬体の各部位ごとに解説されており、著者が取材された調教師等の競馬関係者の発言に基づいた馬見に関する内容も含まれています。図解もありとても分かりやすく、現時点で競馬に紐づく馬体関連書籍の中ではこれが一番おすすめできるかと思います。
■そうだったのか!今までの見方が180度変わる知られざる競馬の仕組み 橋浜 保子
馬体に関してはもちろんのこと、馬具や疾患についても細かく書かれていて、普通に競馬予想をするうえではあまり気に留めないような知識について書かれています。直接的に馬券につながる内容というより、より馬や競馬というコンテンツそのものについて知りたい方にはおすすめです。ただし、出版されたのが2016年で、外厩に関する情報やソエ焼きに関する記載は、現在とは異なっている部分もあるので注意。
■競馬・馬の見方がわかる本 誰も教えてくれなかった馬を見るポイント 伊藤 友康
馬体そのものの形に加え、調教、パドック、返し馬、レースそれぞれの段階での馬の見方について著者の経験を中心に書かれています。パドックでこういう身体の使い方をしているとコズんでいる、細めとギリギリ仕上げの見分け方など、かなり細かな見方についても書かれていて、参考にはなると思います。ただ、著者は競馬関係者ではなく競馬解説者としての経歴で、生物学的知見、というより経験と主観に依る点がどうしても大きいのと、出版が約30年前と古いので、調教タイムやレースタイム等の数字的な部分はあまり役に立たないかと思います。
■ROUNDERS vol.4 治郎丸 敬之(編集)
本号は「「馬見」サラブレッドの身体論」という特集で、様々な著者による馬体評論を読むことができます。先に紹介した『馬体は語る』の引用元となっている記事も掲載されています。血統関連で紹介した『ROUNDERS vol.5』よりかは基本的な内容が多いので、コアな競馬ファンでなくとも読みやすいかと思います。
■メカニズムから理解する馬の動き パフォーマンス向上のためのビジュアルガイド Gillian Higgins
馬の身体のあらゆる部位(骨、関節、筋肉等)の細かい部分の役割や働きに関する解説から始まり、馬が動く時にそれぞれの部位がどのように働き作用するのかが解剖学的知見について学ぶことができます。図解も豊富でオールカラーなのでパラパラとめくるだけでも面白いです。故障やトラブル対処の方法等も書かれていて、競走馬としての馬だけではなく、馬術や乗馬として活躍する馬も含めた”馬そのもの”について知りたい方には良いかと思いますが、専門書なので難しい固有名詞が頻出します。馬の育成や馬術競技に携わられている方には役に立つ要素が大きいかと思います。
27の穴馬が好走するパターンが紹介されていて、1つ1つのパターンに関する解説がされています。「競馬を始めたばかりだけどどのような場合に穴馬が好走することがあるんだろう?」といったことを知るにはいいかもしれませんが、取り上げている好走事例も数あるうちの一つにすぎないので過信は禁物かと思います。パターンを覚えておくことで、予想の充実度は多少上がるかもしれません。
■降格ローテ 激走の9割は”順当”である とうけいば
降格ローテとは、前走ハイレベルなレースを経験し、今回同クラスの低レベル戦に参戦してくる馬のことを指していて、その降格ローテのパターンを7つに分けて解説しています。かなり幅広くかつ細かい分類の統計から降格ローテは導き出されているので、なかなか画期的な予想方法だと思いました。あまり予想に時間をかけられない人やタイムパフォーマンスを重視したい人にはおすすめです。
■馬場のすべてを教えます~JRA全コース徹底解説~ 小島 友実
競馬を予想するにはやはり馬場について知る必要があるかと思います。それぞれのコースの特徴について解説されているのはもちろん、導入されている芝や砂の産地や芝の生育、メンテナンス等の中央競馬の馬場への取り組みについても書かれています。実際にJRA日本中央競馬会に取材されたことに基づく内容なので、単なる主観に基づくものではないのはとても評価できますし、よく見かけるネットの簡略コース図よりも細かく解説されていて参考になります。ただ、出版されたのが2015年なので生育方法や改修工事、コース替わりについて若干現在と異なる点もあるのでその点は注意ですね。
■天才!のPOG 株式会社メディアボーイ(発行)
いわゆる「青本」。初めて手に取ったのはこれでした。個人的に最後のページにある2歳馬の一覧が種牡馬を見やすく表記してあっていいなと思っています。後で紹介する『POGの王道』は少し見づらいです。牧場取材も、例えばノーザンファームの担当厩舎ごとにピックアップされていたり、細かく取材されているなという印象を受けます。ただ、2022~2023シーズンはビックレッドファームの取材がなかったのが残念でした。
■『POGの王道』 株式会社双葉社(発行)
いわゆる「黄本」。表紙に赤部分もあるのではじめはこれが赤本かと思っていました。2022~2023シーズンは大手馬主へのインタビューや大手一口クラブ取材が特集されていたり、期待している馬についての言及もありました。青本にはなかったビックレッドファーム生産馬のフォトパドック、取材もありました。
(上記2種類でリピートするならば青本かと思いますが、今年は別の出版社のものにしようとも思っています。)
2021年に引退された角居勝彦元調教師による自伝です。元々競馬と縁がなかった環境からどのようにこの世界に入り、自分の仕事をしてきたかということはもちろん、自信が印象に残っている馬やレースについても細かく心境がつづられています。競馬に関連する情報の読み方(厩舎コメント等)やちょっとした馬見についても触れられていて、競馬予想をするうえでも役立つ内容があると思います。
■馬を語り、馬に学ぶ 名馬や個性的な馬から得た成功の秘訣・仕事術 矢作 芳人
現在でも現役で活躍されている矢作芳人調教師による著書で、自伝、というよりも自身の仕事に対する考え方や勝負勘はどのように醸成され、磨かれてきたか、といったことを紐解くような内容です。これまでに担当してきた馬に関する思いやちょっとした裏話が多く、最近競馬を始めた人にはなじみの薄い馬がかなり登場するので少し退屈かもしれませんが、矢作厩舎流の馬の仕上げ方や使い方についても書かれており、そこは面白かったです。
■これからの競馬の話をしよう 藤沢 和雄
2022年に引退された藤原和雄元調教師による著書です。今後の”競馬”そのものに関する展望や期待、また競馬ファンがより競馬を楽しく観戦できるようになるための提案が記されています。自伝…とまではいきませんが、現在の競馬の仕組みはこうで、こうなっていくといいよね、といった考えがまとめられていて、ライトな競馬ファンにも分かりやすく、かつ親しみの持てる内容です。これは一読をおすすめしたいです。
元々オーストラリアで騎手をされており、現在は同国で競走馬のシンジケート会社を運営されている川上氏による著書です。オーストラリアで名をはせた競走馬や、レースの仕組み、馬主、調教師、騎手…等々、知識だけではなくオーストラリア競馬の魅力がぎっしりとつまった内容になっています。日本の競馬から視野を広げてみたいという方だけでなく、ライトな競馬ファンにもオススメできる1冊だと思います。
著者は古代ローマ史でも著名な方です。競馬の歴史は古代ギリシアのオリンピックで行われていた戦車競走から始まり、中世から近世にかけてイギリス王室により庇護されたのちに発展していきました。そしてサラブレッドが誕生し、レースの設立、そして諸外国に普及されていきます。その過程を当時の社会背景や国家の権力者がどのように競馬に対して向き合っていたかについて言及されています。
■競走馬の科学 速い馬とはこういう馬だ JRA競走馬総合研究所(編集)
速く走る競走馬とは?また、馬が速く走るために行われている工夫(馬具・健康管理等)について、JRA競走馬総合研究所がまとめた書籍です。基本的な馬の身体のつくりや走り方・身体の使い方の事例も書かれていて、先に紹介している『そうだったのか!今までの見方が180度変わる知られざる競馬の仕組み』と『馬の動き』をより簡潔にしたような印象です。出版されたのが2006年とやや古いので、統計データ等を参照する際はそれを踏まえておく必要がありそうです。改訂版が出てほしいですね。
競馬予想、というより競馬の根底にある楽しみを見出すような内容のもののほうが多いかと思います。
簡単な書評も記載しているので、気になった書籍があればぜひご購入して読んでみてください!(絶版のものもあります。著者名、編集者名敬称略)
血統関連
■新版 競馬の血統学 サラブレッドの進化と限界 吉沢 譲治ネアルコ、ナスルーラ、ノーザンダンサー、ミスタープロスペクター…等、なんとなく聞いたことのある馬名かと思います。これら種牡馬たちがいかに系統を確立してきたかを、生産された背景や、その時代の考え方などと照らし合わせて解説されています。とても読みやすく、近現代の競馬における血統の系統が確立していく過程を知ることができるかと思います。
■競馬の血統学 Part2 母のちから 吉沢 譲治
『競馬の血統学 サラブレットの進化と限界』の続編になります。こちらは新版は出版されていないようです。前著が種牡馬に焦点を当てたのに対し、本著では母系に焦点を当てた内容となっています。ヨーロッパ、とくにドイツでは母系を重視する傾向にあり、伝統を重んじる文化がある…といったことや各国の母系に対する考え方をサラブレッド生産の歴史とともに学ぶことができます。
■血のジレンマ サンデーサイレンスの憂鬱 吉沢 譲治
日本競馬の血統図を書き換えたといっても過言ではないサンデーサイレンス。その血が飽和することで今後の日本競馬にどのような影響を与えるのかについて言及されています。10年ほど前に出版されたものなので、今の競馬と著者の論述を照らし合わせながら読むと面白いかもしれません。
前述の著者と同じですが、続編ではありませんが、上記の2作品を読んだ後に読むほうが理解が深まるかと思います。
■田端到・加藤栄の種牡馬事典 田端 到、加藤 栄
「種牡馬事典」という名目の書籍はいくつかありますが、私が一番最初に手にしたものはこの著者のものでした。注目の新種牡馬から既存の種牡馬の現役時代、血統背景、代表産駒等のポイントが端的にまとめられているかと思います。ただ、包括的にまとめられている分、個々の内容が薄いように感じました。データの部分はあまりあてにならないかと思いますので、後々参照する箇所は少ないかと思います。
■勝ち馬がわかる血統の教科書 亀谷 敬正
血統関連の書籍ではかなり見かけることの多いかと思います。ナスルーラ、ネイティヴダンサー、ノーザンダンサー…等々、大系統ごとに項目が分けられていて、そこから派生していった系統について網羅的に書かれています。網羅的に書かれている分、血統表よりも文章量が多く、少し元の血筋の影響をイメージしづらいかもしれませんが、ネットにある血統表と見比べながら読むといいかもしれません。入門書としては少し難しいように感じますが、読み返すごとに発見も多いので持っていて損はない1冊です。
■一から始める!サラブレッド血統入門 平出 貴昭
こちらも血統関連の入門書的な位置づけのものです。カラーページで、取り上げている馬についてはすべてではありませんが写真や血統表も記載されていて、文章を理解しやすいように書かれています。主要父系(亀谷氏の書籍でいうと大系統)ごとに章分けされていますが、どの章も淡々とした馬の実績の記載になっているので、もう少しそれぞれの血の特徴的なものがあればよかったかな、と思いました。
■日本サラブレッド配合史 笠 雄二郎
かなり古い書籍ですが、この本なしでは日本の近代競馬を語ることはできないかと思います。内容は非常に難しいので、先に挙げた書籍等で基本的な血統について知ったうえで読むほうがいいですね。日本の在来血統、明治の小岩井基礎牝馬、下総御料基礎牝馬から配合史をたどる超大作となっています。現在は絶版となっているので、もし購入するならアマゾンやメルカリ等で中古のものを探すか、こちらのサイトで電子版を安価で購入することもできます。(私は中古で現物を購入しました)
血統屋→http://www.miesque.com/c00001.html
■ROUNDERS vol.5 治郎丸 敬之(編集)
本号は「血統 血と知のギャンブル」という特集で、数名による血統評論が掲載されています。血統研究・評論で著名な故山野浩一氏の貴重な文章も読むことができます。ただ、こちらも内容が少し難しいので、入門書的なものを読了されてから読まれるほうがいいかと思います。
■覚えておきたい世界の牝系100 平出 貴昭
本著は世界的に発展している牝系まとめたものです。一頭ずつの系譜や発展していった産駒がどのような結果を残していったか等について端的にまとめてあります。読み物というよりかはミニ辞典のような感じで、競馬を始めたての方にはなじみのない馬が多く、やや退屈かもしれませんが、血統マニアにはおすすめできると思います。
馬体関連
■馬体は語る 治郎丸 敬之基本的な馬の見方について、馬体の各部位ごとに解説されており、著者が取材された調教師等の競馬関係者の発言に基づいた馬見に関する内容も含まれています。図解もありとても分かりやすく、現時点で競馬に紐づく馬体関連書籍の中ではこれが一番おすすめできるかと思います。
■そうだったのか!今までの見方が180度変わる知られざる競馬の仕組み 橋浜 保子
馬体に関してはもちろんのこと、馬具や疾患についても細かく書かれていて、普通に競馬予想をするうえではあまり気に留めないような知識について書かれています。直接的に馬券につながる内容というより、より馬や競馬というコンテンツそのものについて知りたい方にはおすすめです。ただし、出版されたのが2016年で、外厩に関する情報やソエ焼きに関する記載は、現在とは異なっている部分もあるので注意。
■競馬・馬の見方がわかる本 誰も教えてくれなかった馬を見るポイント 伊藤 友康
馬体そのものの形に加え、調教、パドック、返し馬、レースそれぞれの段階での馬の見方について著者の経験を中心に書かれています。パドックでこういう身体の使い方をしているとコズんでいる、細めとギリギリ仕上げの見分け方など、かなり細かな見方についても書かれていて、参考にはなると思います。ただ、著者は競馬関係者ではなく競馬解説者としての経歴で、生物学的知見、というより経験と主観に依る点がどうしても大きいのと、出版が約30年前と古いので、調教タイムやレースタイム等の数字的な部分はあまり役に立たないかと思います。
■ROUNDERS vol.4 治郎丸 敬之(編集)
本号は「「馬見」サラブレッドの身体論」という特集で、様々な著者による馬体評論を読むことができます。先に紹介した『馬体は語る』の引用元となっている記事も掲載されています。血統関連で紹介した『ROUNDERS vol.5』よりかは基本的な内容が多いので、コアな競馬ファンでなくとも読みやすいかと思います。
■メカニズムから理解する馬の動き パフォーマンス向上のためのビジュアルガイド Gillian Higgins
馬の身体のあらゆる部位(骨、関節、筋肉等)の細かい部分の役割や働きに関する解説から始まり、馬が動く時にそれぞれの部位がどのように働き作用するのかが解剖学的知見について学ぶことができます。図解も豊富でオールカラーなのでパラパラとめくるだけでも面白いです。故障やトラブル対処の方法等も書かれていて、競走馬としての馬だけではなく、馬術や乗馬として活躍する馬も含めた”馬そのもの”について知りたい方には良いかと思いますが、専門書なので難しい固有名詞が頻出します。馬の育成や馬術競技に携わられている方には役に立つ要素が大きいかと思います。
予想(馬券術?)関連
■「絶対に負けたくない!」から紐解く穴パターン事典 メシ馬27の穴馬が好走するパターンが紹介されていて、1つ1つのパターンに関する解説がされています。「競馬を始めたばかりだけどどのような場合に穴馬が好走することがあるんだろう?」といったことを知るにはいいかもしれませんが、取り上げている好走事例も数あるうちの一つにすぎないので過信は禁物かと思います。パターンを覚えておくことで、予想の充実度は多少上がるかもしれません。
■降格ローテ 激走の9割は”順当”である とうけいば
降格ローテとは、前走ハイレベルなレースを経験し、今回同クラスの低レベル戦に参戦してくる馬のことを指していて、その降格ローテのパターンを7つに分けて解説しています。かなり幅広くかつ細かい分類の統計から降格ローテは導き出されているので、なかなか画期的な予想方法だと思いました。あまり予想に時間をかけられない人やタイムパフォーマンスを重視したい人にはおすすめです。
■馬場のすべてを教えます~JRA全コース徹底解説~ 小島 友実
競馬を予想するにはやはり馬場について知る必要があるかと思います。それぞれのコースの特徴について解説されているのはもちろん、導入されている芝や砂の産地や芝の生育、メンテナンス等の中央競馬の馬場への取り組みについても書かれています。実際にJRA日本中央競馬会に取材されたことに基づく内容なので、単なる主観に基づくものではないのはとても評価できますし、よく見かけるネットの簡略コース図よりも細かく解説されていて参考になります。ただ、出版されたのが2015年なので生育方法や改修工事、コース替わりについて若干現在と異なる点もあるのでその点は注意ですね。
POG関連
正直POG関連書籍は見せ方や掲載頭数、発売日等が異なるくらいで、後は好みだと思いますが、私は現時点(2023年3月現在)で2種類手に取ったので紹介します。■天才!のPOG 株式会社メディアボーイ(発行)
いわゆる「青本」。初めて手に取ったのはこれでした。個人的に最後のページにある2歳馬の一覧が種牡馬を見やすく表記してあっていいなと思っています。後で紹介する『POGの王道』は少し見づらいです。牧場取材も、例えばノーザンファームの担当厩舎ごとにピックアップされていたり、細かく取材されているなという印象を受けます。ただ、2022~2023シーズンはビックレッドファームの取材がなかったのが残念でした。
■『POGの王道』 株式会社双葉社(発行)
いわゆる「黄本」。表紙に赤部分もあるのではじめはこれが赤本かと思っていました。2022~2023シーズンは大手馬主へのインタビューや大手一口クラブ取材が特集されていたり、期待している馬についての言及もありました。青本にはなかったビックレッドファーム生産馬のフォトパドック、取材もありました。
(上記2種類でリピートするならば青本かと思いますが、今年は別の出版社のものにしようとも思っています。)
自伝
■さらば愛しき競馬 角居 勝彦2021年に引退された角居勝彦元調教師による自伝です。元々競馬と縁がなかった環境からどのようにこの世界に入り、自分の仕事をしてきたかということはもちろん、自信が印象に残っている馬やレースについても細かく心境がつづられています。競馬に関連する情報の読み方(厩舎コメント等)やちょっとした馬見についても触れられていて、競馬予想をするうえでも役立つ内容があると思います。
■馬を語り、馬に学ぶ 名馬や個性的な馬から得た成功の秘訣・仕事術 矢作 芳人
現在でも現役で活躍されている矢作芳人調教師による著書で、自伝、というよりも自身の仕事に対する考え方や勝負勘はどのように醸成され、磨かれてきたか、といったことを紐解くような内容です。これまでに担当してきた馬に関する思いやちょっとした裏話が多く、最近競馬を始めた人にはなじみの薄い馬がかなり登場するので少し退屈かもしれませんが、矢作厩舎流の馬の仕上げ方や使い方についても書かれており、そこは面白かったです。
■これからの競馬の話をしよう 藤沢 和雄
2022年に引退された藤原和雄元調教師による著書です。今後の”競馬”そのものに関する展望や期待、また競馬ファンがより競馬を楽しく観戦できるようになるための提案が記されています。自伝…とまではいきませんが、現在の競馬の仕組みはこうで、こうなっていくといいよね、といった考えがまとめられていて、ライトな競馬ファンにも分かりやすく、かつ親しみの持てる内容です。これは一読をおすすめしたいです。
海外競馬
■南半球で馬主になる 川上 鉱介元々オーストラリアで騎手をされており、現在は同国で競走馬のシンジケート会社を運営されている川上氏による著書です。オーストラリアで名をはせた競走馬や、レースの仕組み、馬主、調教師、騎手…等々、知識だけではなくオーストラリア競馬の魅力がぎっしりとつまった内容になっています。日本の競馬から視野を広げてみたいという方だけでなく、ライトな競馬ファンにもオススメできる1冊だと思います。
研究
■競馬の世界史 サラブレッド誕生から21世紀の凱旋門賞まで 木村 凌二著者は古代ローマ史でも著名な方です。競馬の歴史は古代ギリシアのオリンピックで行われていた戦車競走から始まり、中世から近世にかけてイギリス王室により庇護されたのちに発展していきました。そしてサラブレッドが誕生し、レースの設立、そして諸外国に普及されていきます。その過程を当時の社会背景や国家の権力者がどのように競馬に対して向き合っていたかについて言及されています。
■競走馬の科学 速い馬とはこういう馬だ JRA競走馬総合研究所(編集)
速く走る競走馬とは?また、馬が速く走るために行われている工夫(馬具・健康管理等)について、JRA競走馬総合研究所がまとめた書籍です。基本的な馬の身体のつくりや走り方・身体の使い方の事例も書かれていて、先に紹介している『そうだったのか!今までの見方が180度変わる知られざる競馬の仕組み』と『馬の動き』をより簡潔にしたような印象です。出版されたのが2006年とやや古いので、統計データ等を参照する際はそれを踏まえておく必要がありそうです。改訂版が出てほしいですね。